現代的なスーツとは、何によって決まるのか?
Written by Kenji Tanaka
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「現代的なスーツ」と聞くと、どんなシルエットを思い浮かべるでしょうか。
おそらく、多くの人がまず思い浮かべるのは、身体に沿った比較的細身のスーツではないでしょうか。
2000年代から2010年代にかけて、スーツのシルエットは大きく細身へと変化しました。ジャケットは短く、肩はコンパクトに、パンツも細く。身体のラインに沿ったシャープなシルエットは、「modern」や「contemporary」という言葉と強く結びついていきました。
そのため、「太いスーツ=古い」という感覚は、現在でもかなり根強く残っています。
ところが、ここ数年で状況は少し変わりました。
ファッション全体でワイドなパンツやリラックスしたシルエットが広がり、スーツにもゆとりのあるジャケット、幅のあるパンツ、長めの着丈などが戻ってきました。ファッション全体でワイドなパンツやリラックスしたシルエットが広がり、スーツにもゆとりのあるジャケット、幅のあるパンツ、長めの着丈などが戻ってきました。実際にuniontailorsでも、こうしたゆとりのあるシルエットのスーツをお仕立てする機会が増えています。
では、ワイドなスーツは現代的なのでしょうか。
答えは、そうとも限りません。
同じワイドなスーツでも、現代的にも古くも見える
ワイドなスーツは、ある人が着れば非常に現代的に見える一方で、別の人が着ると驚くほど古く見えることがあります。
ここで重要なのは、単純に「細いか、太いか」ではありません。
重要なのは、スタイルとプロポーションです。
肩幅、ジャケットの着丈、胸まわり、ウエストの絞り、ラペルの幅、パンツの太さ、股上。そして、それぞれの比率がどう組み合わされているか。
例えば、パンツを太くしただけでは、現代的なスーツにはなりません。肩を大きくし、ジャケットを長くし、パンツだけを太くすれば、かえって過去の時代を連想させるシルエットになることもあります。
一方で、全体のプロポーションを意図的に設計し、適度なゆとりを持たせれば、ワイドなシルエットでも非常に現代的に見せることができます。
これは細身のスーツでも同じです。
細身だから古いわけではありません。身体に対するフィット感、ジャケットの着丈、パンツの細さなどが現在の感覚に合っていて、全体として調和していれば、細身のスーツも十分に現代的です。
「現代的」に決まったシルエットはない
そもそも、「現代的」という言葉に、ひとつの決まったシルエットがあるわけではありません。
1960年代に現代的だったスーツと、1980年代に現代的だったスーツ、そして2010年代に現代的だったスーツは、当然ながら同じ形ではありません。
つまり、現代的なスーツとは、特定のシルエットそのものではなく、その時代の感覚に対して、スタイルとプロポーションが自然に成立しているスーツなのだと思います。
現在は、細身のシルエットもあれば、リラックスしたシルエットもあります。パンツをワイドにしたスタイルもあれば、肩をしっかり構築したスタイル、逆に柔らかな肩まわりを持つスタイルもあります。
選択肢そのものが以前より広がっているのです。
だからといって、ワイドにする必要はない
ここ数年、スーツにもワイドなシルエットが戻ってきました。
だからといって、すべての男性がワイドなスーツを選ぶ必要があるわけではありません。
流行しているシルエットと、自分にとって自然なシルエットは、必ずしも同じではないからです。
私は長年、比較的すっきりしたシルエットの服を着てきました。20年以上かけて、自分が心地よいと感じる服のバランスやスタイルが少しずつ形成されてきたと思います。
そのため、トレンドが変わったからといって、突然すべてをワイドに変えることには、少し違和感があります。
実際、ワイドなパンツも何度か試着してみました。しかし、どうもしっくりこない。
それは、サイズが合っていないからではありません。
そのシルエットが、自分のスタイルとして自然に感じられないからです。
これは年齢だけの問題ではありません。
長い時間をかけて形成されたスタイルには、その人の好みだけでなく、立ち方、歩き方、選ぶ靴、シャツの着方、そして自分自身が服を着たときに感じる感覚まで含まれています。
だから、トレンドが変わったからといって、過去のスタイルをすべて捨てる必要はありません。
むしろ、自分のスタイルをベースにしながら、現在の感覚を少しずつ取り入れていく。
それも、一つの現代的なスタイルなのだと思います。
現代的なスーツは、バランスで決まる
結局のところ、現代的なスーツに絶対的な「細さ」や「太さ」はありません。
細身でもいい。
ワイドでもいい。
重要なのは、それが意図されたスタイルとして成立しているかどうかです。
ジャケットだけが大きすぎないか。パンツだけが太すぎないか。着丈とパンツの長さは合っているか。ラペル幅と肩幅のバランスは取れているか。
そして、それ以上に重要なのは、その服がその人自身のスタイルと自然につながっているかどうかです。
現代的なスーツを選ぶときに考えるべきなのは、
「今、何が流行しているか」ではなく、「今の自分のスタイルに、どのシルエットが自然に見えるか」
ということです。
オーダーメイドの面白さも、そこにあります。
流行している形をそのままコピーするのではなく、その人の身体、スタイル、パーソナリティーを理解したうえで、現在の感覚に合わせてプロポーションをつくる。
現代的であることは、細身であることではありません。
かといって、単にオーバーサイズであることでもありません。
現代的なスーツとは、単に「今流行している形」ではないのだと思います。
それは、現在の感覚と、その人自身のスタイルとの間に、自然なバランスがつくられているスーツなのです。