シャツのカフスは、なぜ丸いのか、なぜ角が切られているのか

シャツのカフスは、なぜ丸いのか、なぜ角が切られているのか

Written by Kenji Tanaka

シャツの袖口には、いくつかの形があります。

角が丸くなったラウンドカフス。
角を斜めに切り落としたカットアウェイカフス。
そして、角をそのまま残したスクエアカフス。

シャツをオーダーするときには、これらを「デザインの選択肢」として選ぶことが多いでしょう。

しかし、カフスの形を少し注意して見てみると、別の疑問が出てきます。

なぜ、わざわざ角を丸くしたり、斜めに切ったりするのでしょうか。

これは単なる装飾なのでしょうか。


カフスは、動く場所にある

カフスが付いているのは手首です。

当たり前のことですが、シャツの中でも手首は非常によく動く場所です。

腕を曲げる。
手を回す。
机に手を置く。
ポケットに手を入れる。
時計を見る。

そのたびに、袖口も一緒に動きます。

しかも、カフスは単独で動くわけではありません。

その外側にはジャケットの袖があり、手首には時計があることもあります。

つまりカフスは、「静止したときにきれいに見える形」だけを考えればいい部分ではありません。

実際に人が着て動いたとき、どのように形が変化するのか。

それもカフスを考えるうえで重要なポイントになります。


スクエアカフスの「角」

White twill dress shirt with square cuff detail

角をそのまま残したスクエアカフスは、非常に端正です。

直線と直角によって構成されているため、シャツの袖口を明確に見せることができます。

しかし、実際に着て腕を動かしてみると、この「角」が少し厄介な存在になることがあります。

手首を曲げたり、袖口が何かに押されたりすると、直角に残った部分が押されて、角がぐにゃっと崩れることがあります。

もちろん、これはスクエアカフスが悪いという話ではありません。

むしろ、直角という形を残しているからこそ起こる現象です。

平面的に置いたシャツではきれいな直角でも、人間の手首に巻き付いて動くと、その形を維持することは簡単ではありません。

ここが、カフスという小さなパーツの面白いところです。


角をなくすという考え方

そこで、角を丸くしたり、斜めに切り落としたりする形があります。

ラウンドカフスは曲線によって角を消します。そのため、袖口全体に柔らかなラインが生まれます。

White tailored dress shirt with rounded cuff detail

カットアウェイは直線を残したまま角を斜めに切り落とします。そのため、ラウンドよりもシャープな印象になります。

Light blue tailored dress shirt with cutaway cuff detail

その結果、手を動かしたときにも、スクエアカフスのように「角」が押されて形を崩すということが起こりにくくなります。

ここで重要なのは、これを単純に「動きやすさ」の問題として考えないことです。

カフスが動きを妨げるというよりも、

動いたときに、袖口の形をどう保つか。

という問題です。

シャツは平面の上でデザインされますが、実際には立体的な身体の上に取り付けられます。

そして、その身体は常に動いています。

だからこそ、服の小さな角や曲線にも意味があります。

そして、ジャケットを着るとさらに変わる

シャツだけを見ていると、カフスの違いは小さく感じるかもしれません。

しかし、ジャケットを着ると話が変わります。

ジャケットの袖口からシャツのカフスが少しだけ見える。

そのわずかな部分に、カフスの形が現れます。

ラウンドなら曲線が見える。

カットアウェイなら斜めのラインが見える。

スクエアなら直線と角が見える。

そして、袖口から見えるカフスは、ジャケットの袖や時計とも一緒に見られます。

つまり、カフスの形はシャツだけの問題ではありません。

ジャケットを着たときの手元全体の形をつくるディテールでもあります。

「形」と「構造」は別の話

ここで、カフスについて一つ整理しておきましょう。

カフスには、外周の形と構造という、別の考え方があります。

Round、Cutaway、Squareなどは、主にカフスの外周の形についての話です。

一方、Single CuffとDouble Cuffは、カフスの構造についての話です。

Single Cuffは一枚のカフスを基本とする一般的な構造。

Double Cuffは、通常のカフスより長く作り、折り返して二重にする構造です。一般的にはカフリンクスで留めます。

そして、ここで少しややこしいのがFrench Cuffです。

French Cuffは、一般的にDouble Cuffを指す別名です。実際に「French cuff or double cuff」と併記される資料もあり、シャツ専門店でもFrench cuffをDouble Cuffの別名として説明しています。

つまり、

Double CuffとFrench Cuffは、基本的に同じ構造を指します。

ただし、ここで重要なのは、Double / FrenchとRound / Cutaway / Squareは同じ分類ではないということです。

Double / Frenchは、カフスをどのように構成するか。

Round / Cutaway / Squareは、カフスの外周をどのような形にするか。

そのため、実際には、

  • Double / French + Round
  • Double / French + Square
  • Double / French + Cutaway

という組み合わせが成立します。French Cuffにも、square、round、angledなど複数のコーナー形状があります。

この二つを分けて考えると、カフスの種類はそれほど複雑ではありません。

カフスは、なぜこの形なのか

カフスを見ていると、服づくりの面白さが見えてきます。

平面に置いたときにきれいな形。

身体に着せたときの形。

腕を動かしたときの形。

そして、ジャケットと組み合わせたときの形。

そのすべてが同じではありません。

だから、カフスの角を丸くすることも、斜めに切ることも、単なる装飾として考える必要はありません。

服は、動く身体の上で完成するものだからです。

もちろん、ラウンドカフスが正解で、スクエアカフスが間違っているという話でもありません。

どの形にも、それぞれの美しさがあります。

重要なのは、なぜその形を選ぶのかを理解することです。

カフスは小さなディテールです。

しかし、その小さな形をどう設計するかによって、シャツの表情だけでなく、ジャケットを着たときの袖口の見え方まで変わります。

ラウンドなのか、カットアウェイなのか、スクエアなのか。

あるいは、シングルなのか、ダブルなのか。

そうした違いを知ったうえでシャツを見ると、今まで何気なく見ていた袖口にも、少し違ったものが見えてくるかもしれません。

 

(本記事の画像は、説明・図解のためAIを使用して作成しています)
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