ジャケットのポケットには、どんな種類があるのか
Written by Kenji Tanaka
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ジャケットには、胸や腰、そして内側にいくつものポケットがあります。
一見すると似ているように見えても、ポケットにはそれぞれ異なる構造があり、また、もともと異なる目的のために作られてきました。
今回は、テーラードジャケットでよく使われるポケットを、**「どこにあるか」「どのように作られているか」「どのような形をしているか」**に分けて整理してみます。
まずは、どこにあるポケットなのか
胸ポケット

ジャケットの左胸にあるポケットです。
現在ではポケットチーフを入れる場所として知られていますが、もともとは小さなものを収納するための実用的なポケットでした。
テーラードジャケットでは、胸のラインを邪魔しないよう、細くシンプルに仕立てられることが多いポケットです。
腰ポケット

ジャケットの左右の腰部分に設けられるポケットです。
手を入れたり、小物を収納したりするための、ジャケットの中でも特に実用性の高いポケットです。
内ポケット

ジャケットの内側に設けられるポケットです。
財布、眼鏡、ペンなど、外から見せたくないものを収納するために使われます。
ポケットの「作り方」にも種類がある
同じ胸ポケットや腰ポケットでも、ポケット口の仕立て方によって見た目は大きく変わります。
箱ポケット

日本のテーラーで「箱ポケット」と呼ばれる、胸ポケットでおなじみの仕様です。
ポケット口に細い口布を用いて、箱のように見える形に仕立てます。
テーラードジャケットでは非常に一般的な胸ポケットの作り方で、胸のラインをすっきり見せることができます。
英語では welted breast pocket などと表現されることがありますが、日本語の「箱ポケット」と英語の welt pocket は完全に同じ分類ではありません。
片玉縁ポケット

ポケット口の片側に玉縁を作る仕様です。
非常にシンプルで、ポケットの存在を目立たせず、すっきりとした表情になります。
両玉縁ポケット

ポケット口の上下を玉縁で仕立てる仕様です。
表から見えるのは細い2本の玉縁だけで、非常にすっきりした印象になります。
フォーマルウェアなどでよく見られる仕様で、英語では double welt pocket や jetted pocket と呼ばれることが多いものです。
パッチポケット

ジャケットの表側に別布を縫い付け、その中に収納スペースを作るポケットです。
構造が比較的シンプルで、箱ポケットや玉縁ポケットよりもカジュアルな印象になります。
スポーツジャケットなど、実用性を重視する服にも多く見られます。
フラップは「ポケットの構造」ではない
ポケットについて少し混乱しやすいのが、フラップです。
フラップとは、ポケット口を覆う「蓋」のこと。
もともとは雨や埃などがポケットの中に入りにくくするという、実用的な役割がありました。
現在では機能だけでなく、ジャケットのデザインを決める重要なディテールになっています。
ただし、フラップそのものがポケットの構造を表しているわけではありません。
玉縁ポケットやパッチポケットなど、さまざまなポケットに組み合わせることができます。
玉縁ポケット+フラップ

パッチポケット+フラップ

ポケットの位置や形状にも名前がある
ポケットには、「どこに付いているか」や「ポケット口がどのような方向になっているか」によって呼ばれるものもあります。
チェンジポケット

英語でも change pocket と呼ばれます。
通常、右側の腰ポケットの上に追加される小さなポケットを指します。
もともとは小銭やチケットなど、小さなものを入れるための実用的なポケットだったとされています。
現在では実際に小銭を入れる人は少なくなりましたが、英国的なテーラリングを象徴するディテールとして残っています。
スラントポケット

ポケット口を斜めに配置した仕様です。
英国的なテーラリングでよく見られ、水平なポケットよりもスポーティーで動きのある印象を与えます。
スラントポケットも、それ自体がポケットの構造を表しているわけではありません。
例えば、スラントポケット+フラップのように、他の仕様と組み合わせることができます。
一つのポケットに、複数の特徴を組み合わせる
ここがポケットを理解するときに少し面白いところです。
例えば、
左胸
→ 胸ポケット → 箱ポケット
左右の腰
→ 腰ポケット → スラントポケット+玉縁+フラップ
右腰の上
→ チェンジポケット → フラップ付き
というように、「どこにあるか」「どう作られているか」「どのような形をしているか」は、それぞれ別に考えることができます。
だから、「玉縁ポケット」と「フラップポケット」は必ずしも対立するものではありません。
一つのポケットに、複数の仕様が組み合わされるからです。
ポケットは、単なる収納ではない
現代のジャケットでは、ポケットは必ずしも物を入れるためだけに存在しているわけではありません。
ポケットの位置、角度、大きさ、そして作り方によって、ジャケット全体の印象やプロポーションまで変わります。
例えば、胸ポケットを少し高くするだけでも上半身の見え方は変わります。
腰ポケットの位置や角度も、ジャケットのシルエットに影響します。
つまりテーラーにとってポケットは、
「物を入れる場所」であると同時に、「ジャケットの形をつくるディテール」
でもあります。
一見すると小さなパーツですが、ポケットにも、そのジャケットをどう見せ、どう使うかという設計思想が込められているのです。